2009年7月27日月曜日

今月の「困ったちゃん」 セスジスズメの幼虫

農薬をいっさい使わない畑には「虫」がつきものだ。農作物の葉や実を食べるベジタリアンの虫。それらを捕食する肉食性の虫。畑とそれを取り囲む環境が、虫をはじめとするさまざまな生きものの食物連鎖が展開される、ひとつの生態系となっている。虫好きとしては、人間の都合で一刀両断に「害虫」「益虫」とレッテルを貼ることにちょっぴり抵抗があるので、ここでは畑仕事で出会う厄介な連中を総称して「困ったちゃん」、それらの天敵となりうる生きものを「助っ人くん」と呼ぶことにしよう。
で、さっそく出会っちゃった、今月の「困ったちゃん」が、このコ。


サトイモの成長記録を測っていたときのことだ。葉の上に見つけたこのイモムシは体長約8センチ。丸々と太った体には派手な目玉模様がいっぱいで、どことなくヘビを思わせる姿だ。ピンと突き出た尾角(おしりの突起)は、スズメガ科の蛾の幼虫に共通した特徴である。調べてみると、サトイモ、サツマイモ、コンニャク、ヤブガラシ、ノブドウ、ホウセンカなどの葉を食べるセスジスズメの幼虫だった。幼虫の左側には脱皮殻も。大きさや体色からして終齢幼虫(脱皮を繰り返した、蛹になる前の幼虫)だろうか。サトイモの株を順に点検していくと、大小いくつもの幼虫たちが見つかった。
個体によって体色にバリエーションがあり、なかには緑色の幼虫も。点々と体についた派手な目玉模様は、自然界では「脅しの信号」だ。わざと目立つ色やデザインを身にまとうことで、「わたしは危険だよ。近づかないでね」と、天敵の鳥や肉食昆虫にサインを送っていると考えられている。グロテスクといえばグロテスクだけれど、見ようによってはなかなかアーティスティックじゃありませんか。
畑仕事の師匠・元さんいわく、「ま、見つけたら即、駆除の対象ですね。でもコイツは数が少ないからまだいいほう。ヨトウムシ(ヨトウガ類の幼虫)なんかは、大発生して畑を丸坊主にしちゃうこともありますから」
セスジスズメは大人になると、渋い縞模様の着物みたいに小粋な羽を持った蛾に変身するんだがなぁ。だが、仕方がない。われらが畑のかわいいサトイモとコンニャクのためである。しばしアートな幼虫を観察(鑑賞)したあと、気の毒だが全員あの世に行っていただいた。合掌。

おまけ。今月の「助っ人くん」。

ちょっとピンぼけだが、畑周辺の草むらで見かけたイオウイロハシリグモ。巣は張らずに葉の上で獲物を待ち伏せするタイプのクモで、和名のとおり硫黄色をしている。散らばった羽は(たぶん)ベッコウハゴロモを捕食した残骸。畑にもぜひ出張してきてほしい「助っ人くん」である。bun

0 件のコメント:

コメントを投稿