2009年9月4日金曜日

「スーパー困ったちゃん」が、続々と!

8月12日。
この日、畑では思わぬ試練が私たちを待ち受けていた。ゴマの葉を食い荒らす大型の蛾、シモフリスズメの幼虫が大量発生していたのだ。葉が丸坊主にされてしまった株も1本や2本ではない。


「こいつは迷惑千万な夏の定連。ゴマを植えると必ず出るので、うちでは“ゴマムシ”って呼んでいます」とは、山田 元師匠の弁。その言葉のとおり、手元にあるフィールド図鑑には「ゴマを栽培すると必ず発生し、加害する虫」という解説も見つかった。

終齢幼虫は体長9〜10センチ。7月に発生したセスジスズメの幼虫よりもひと回りほど大きく、和名のごとく体の霜降り模様と鋭く突き出た尾角がまがまがしい印象である。

「これは困った。どうしたものか」などとつぶやいていると、すかさず元さんからツッコミが入った。
「ホントに困ってます? 心なしか声が弾んでますけど」
満を持して対峙した大物の「困ったちゃん」に、知らず口元がほころんでいたらしい。

例によってじっくり観察したあと、捕殺することに。

が、しかし、今回の敵はなかなか手強い。指でつまんで駆除しようとするも、後肢の吸盤をピタッと吸着させて茎から離れない。そればかりか、胸部を左右にぶるんぶるんと振るわせて威嚇する。必死に抵抗する幼虫をつまみ落として、クワで一撃。あとは土に還すという、すこぶる原始的な駆除方法は、殺生の数だけ心に負担がかかる。捕殺が終わると心身ともにヘトヘトに……。

殺虫剤を使わずに素手で虫に立ち向かうのは、「タフな神経でないとやってらんないなー」と実感することしきり。畑の生きものを愛おしく思いつつも、その反面、みずからの手を汚して彼らを殺戮するアンビバレント。なんとも屈折した心境になるが、でも農薬に頼らない有機農業を選んだ以上、そうそうナイーブなことを言ってもいられない。「エコ」と「エゴ」って表裏一体なのかもと、思いを馳せたりするのだった。


葉の上に点々と産み付けられたシモフリスズメの卵。これを見逃さずに駆除することも忘れてはならない。(それでも、見落とすんだよなぁ)

さて、この日出会った「困ったちゃん」は、蛾の幼虫だけでも例をあげれば枚挙にいとまがない。

● とうもろしに巣くう、アワノメイガの幼虫


農家の人がとりわけ頭を痛める、とうもろこしの大敵だ。

調べたところでは、成虫は年2〜3回発生し、葉裏や雄穂(てっぺんのフサフサした穂)に50個前後の卵塊を生み付ける。ふ化した幼虫集団はやがて分散し、葉の基部や茎を食い破って侵入し、やがては実をも食い尽くしてしまう。
これが茎を食害した痕跡(食痕)と、幼虫のふん。


株ごと廃棄せざるを得ないほどダメージを受けたものも少なからずあった。トウモロコシ好きとしては収穫が減り、すこぶる無念。ふ化して数日は集団で巣を張っているそうなので、雄穂が出たタイミングでトウモロコシをよく点検し、巣を見つけしだい集団ごと駆除するのがいいのかもしれない。来年に生かしたい教訓だ。

● ひょうたんの葉と実を荒らす、ウリキンウワバの幼虫

うわっ、ひょうたんの葉の裏にも超一級の「困ったちゃん」が! 
アップで見るとこんなやつ。ヤガ科の蛾、ウリキンウワバの若齢幼虫だ。

和名に「ウリ」と冠されているように、ヘチマ、キュウリ、カボチャ、カラスウリなど、ウリ科の植物の葉を好んで食べ、やがては実にも食害を及ばす、「超・困ったちゃん」である。

● 今月のエコひいき

ニンジンの葉にいたキアゲハの幼虫。ミカン科の植物の葉を食べるアゲハチョウやクロアゲハ、カラスアゲハの幼虫とは違い、キアゲハはセリ科の植物を食草とする。

頭(に見える胸部のふくらみ)をツンツンしてみよう。

ニョキッと突き出た橙色の臭角は、唯一にしてささやかすぎる彼らの武器。臭気を放つことで外敵から身を守っているのだ。アゲハの臭角はちゃんと柑橘類の香りがするし、このキアゲハの幼虫はセリに似た鮮烈な香りを臭角から放っていた。

「かわいい! いい匂い!」と、わが仲間たちから体をツンツンされるキアゲハの幼虫。見たところ数も少なく食害率も低そうだ。すでにセロリの収穫も終わり、ほかに彼らが害をなすセリ科の植物は畑にない。ここはひとつ、こいつらだけは捕殺からお目こぼしいただけないだろうか。
そう詭弁を弄してキアゲハの命乞いをする、蝶好きのわたくし。
「エコ」が「エゴ」に転じて「エコひいき」と化す一瞬であった。
写真と文 bun

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