2010年8月1日日曜日

畑のハンター、その仁義なき戦い




畑には名ハンターがいっぱいいる。カエル、トカゲ、クモ、カマキリ、狩人バチ、サシガメなど、葉や実を荒らす昆虫を自分の、あるいは自分の子どものエサとして狩る生きものたちだ。

夏のある日のこと。育ち盛りのトウモロコシの葉の上でアマガエルくんを見つけた。彼らは、待ち伏せ戦法で小型の昆虫などを捕食する天性のハンターだ。よしよし、せいぜい狩りに励んで、畑の困ったちゃんたちを食べておくれ。

ん? だが、このアマガエル、どこかヘンだ。
 よ〜く見てほしい。カエルくんの喉のあたりに何か、ぶら下がっている。



これは何だろう? 調べてみると、どうもオオキベリアオゴミムシの幼虫のようだ。畑のハンターであるアマガエルをねらい打ちする、恐ろしい刺客である。

オオキベリアオゴミムシとは、虹色に輝く美しい羽をもつゴミムシ(甲虫の一種)の仲間だ。この幼虫は、葉の上で待ち伏せして、アマガエルが通りすがるとその体表に鋭いあごで食らいつき、体液をすすりながら成長する。餌食となったアマガエルは、哀れかな、徐々に弱っていき、最後にはひからびて死んでしまうのだ。1匹を食い尽くした幼虫は次なる標的を求め、成虫になるまでに、全部で3匹くらいのカエルにとりつくという。カエルの天敵というと、すぐにヘビを思い浮かべるが、アマカエルにとってはある意味、もっと狡猾で恐るべき敵が畑にはひそんでいるのである。



いっぽう、こちらの凶悪顔はオオモンクロベッコウ(♂)といって、狩人蜂の仲間である。

一般にベッコウバチの仲間というと、アシナガバチやスズメバチなどと同様に、畑のイモムシを肉団子にして狩る名ハンターとして知られているが、困ったことに、このオオモンクロベッコウはかなりの偏食家。畑の強力な助っ人でもあるクモさんを専門に狩っちゃう蜂なのである。




ああ、クモさんが、クモさんが!
このクモは毒針に刺されて麻痺状態ではあるが、生きている。ベッコウバチの仲間は獲物をいったん草の中に隠し、砂地を掘って巣穴を作り、その中に獲物を収納する。そして産卵。あとは砂をかけて巣穴をきれいにふさいで任務完了だが、一連の動作は実に几帳面で無駄がない。写真のクモは哀れにも、生きながら孵化したベッコウバチの幼虫の餌と化す運命にあるのだ。

ところが! このベッコウバチの上前をはねて生きる輩もいる。ベッコウバチが一心不乱に巣穴を掘って間に、仮死状態のクモの体に卵を産み付けてしまう寄生バチや寄生バエだ。そうとは知らずに寄生されたクモを巣穴に入れれば、ベッコウバチの幼虫がどういうことになるかは、推して知るべし。まったく油断も隙もあったもんじゃない。

ある種のハンターを専門に狩るハンターもまた存在し、さらにハンターが狩った獲物をちゃっかり横取りする泥棒もいる自然界。いずれのシーンも、畑のかたすみで人知れず繰り広げられている、小さなスペクタクルである。

写真と文 Bun


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